暗いところで待ち合わせ / 乙一
中田永一著として書かれた本を読んだのが、この夏が初めて。
乙一名義の本は今回が初です。
何でだろう…多分、ちょっと怖いイメージがあったからだ。ホラーのイメージ。でも、とりあえず「暗いところで待ち合わせ」はそんなことはなくて、少し不思議な関係の二人の話。
ミチルは視力を失い、父親が亡くなってからは一人で家に暮らしていた。
ヒロアキは会社員だったが、ある日、上司を駅のホームから突き落とし殺した犯人として追われる。
駅から逃げ出したヒロアキは、ミチルが一人で住む家にこっそり入り込み、不思議な生活が始まる。気づかれないようにふるまうヒロアキ、気づかないミチル。気づかれたのかもしれないと思いだすヒロアキ、気づいたことを悟られたのかもと思いだすミチル。
二人の関係や殺人事件の結末が、ラストに向かってだんだんと動いていきます。
ミチルは目が見えなくなったわけで、その過程も少しえがかれているけれど、
その葛藤みたいなものはあまり描写されていなくて、淡々と過ぎる。
むしろ、感情がそこまで表面に出ていなかったものが、物語が進むにつれて出てくるのが良いなあと思った。ミチルの数少ない友達とのやり取りとか。
ヒロアキは周りの人と馴染めず、上司のことを憎んでいたけれど、
でも読み終わってみて、ちょっとイメージが変わった気がする。
静かだけど魅力的な一冊。
★★★☆☆